つぎはぎ/偶像/天使たち

脳内、日記、自分か好きな人の精神分析、てきとー独自哲学などなど

たいほからのはなし(フィクション)

フィクションのお話の続きです。

 

こうして、留置所にぶち込まれたりるかちゃん。その日は薬と疲れでぐっすりでした。

しかし翌朝!前日の薬の摂取量から察せられると思いますが、とてつもない離脱症状が……。朝は看守が私だけぐっすりなので起こしに来ました。

「いつまで寝てんの!みんなもう始めてるよ!!」

何を?と思いましたが、片付けでした。布団の片付けです。布団を3回畳んで、その上に畳んだシーツと枕、畳んだ枕カバーを乗せます。これが畳み方や位置を間違えていると怒られます。

私は布団の片付けは大の苦手です。修学旅行でも他人にやってもらっていました。

ありえないくらい離脱の中そんな器用なことできますか?怒られました。

布団を片付けたら箒と塵取りと水入りバケツと雑巾×2を渡されました。まず部屋全体を箒で掃いて塵取りでゴミ(髪とか)集めた後に、雑巾がけだそうです。もう一枚の雑巾はトイレ掃除用…………

私、人生でトイレ掃除なんてしたことないよ!!!??

ていうかほとんど掃除したことない!!

それに部屋の掃除もなんてアナログな……こんなん終わるわけ…と思っていたら色んな場所から「終わりました!」の声が。後にわかったのですが、律儀に雑巾がけなんてせずにちょっとやったフリして終わらせてたんです。そりゃそうだ。トイレ掃除ってしたことないので屈辱でした。

次は洗顔。雑巾がけが超汚いと思って念入りに手を洗い、前日のメイクが残ってたので顔も念入りに洗ってたら、遅い!!と言われました……。横にちっさい鏡があるんですけど、鏡も見たら怒られたんでなんのためにあるのかわかりません。朝飯前に何故か歯磨きをさせられ、(これも遅いと言われた)髪を梳かす。「早くして!みんな待ってるんだから!!」と言われる。

後からわかったことですが、一人が洗顔をする際に看守の半分くらいがつくので、他の留置者は待ち状態らしいです。

再び部屋に閉じ込められました。後で詳しく書きますが、留置所は本が借りれます。

ただ最初は本は借りれないみたいです。面会もできないらしいです。それを誰も伝えてくれなかったので、見放されたのかと思いました。

本がなかったので、とにかく暇で、とにかく離脱症状が辛かったです。

この日は離脱症状が辛かっただけで、出来事は何もありませんでした。告知書という施設内でのルールが書かれた紙を渡され離脱で全く文字が入ってこない状態のまましばらくしたら告知書を取り上げられていた、くらいで、本当に三食出るだけでした。さらに時計が本来は見える位置にかけられていたのですが、前日1DAYのコンタクトをしていて、予備も眼鏡もなかった私は全く見えず、今が何時かわからない監禁された人間のような気分でありました。それに私は冤罪と捉えてるので、(エスカレーターから落ちそうになったところを無理矢理掴まれ下の階に「誘導」し、上に戻り「商品を持ち出したことにした」ように捉えています。)実際、ただ監禁されている気分でした。あ、何もなかったというのは訂正します。国選弁護人が来ました。といっても契約の書類にサインをしただけです。

まだ2日で帰れると思っていたのに「自分可哀想」みたいな意識(と離脱)で食欲が湧かず、半分くらいしか食べませんでした。朝がそうで、昼はさらに減って、夜はほとんど食べませんでした。

翌朝、言われたように片付けていると看守が来て「今日はお出かけの日だからね!」と言いました。お出かけ…??本が借りられるようになったので、伊坂幸太郎の「重力ピエロ」を借りました(戸塚担) 重力ピエロは戸塚担とか関係なく普通に面白いし泣けるので良い本です。ただハルが自首しないままなのは警察的にどうなのか…?まあ、そんな真剣に蔵書のチェックはしてなさそう。そんなこんなで真剣に楽しく読んでいたのに、「お出かけ」の時間になりました。

「お出かけ」というのは検察庁へ行くことでした。

検察官の判決で裁判所に行くか決まるらしいです。ここで大丈夫なら帰れるそうです。

当然帰れるだろうと思い、大した心配はなかったです。目が全く見えない以外は。

「お出かけ」や移動の際はまず腰にベルトをつけられ、そこに縄が一周していて、その縄を手錠の真ん中の穴に通し、残った縄を看守あるいは警官が持つという犬の散歩みたいな格好です。屈辱的。

検察官のいる部屋(名前は知らない)は職員室の一角のような感じで、助手?の男性は高橋海人に激似のイケメンでした。検察官は優しそうなおじいちゃん。

これは帰れる!!と思いました。

検察「名前は飴屋瑠架(仮名)ちゃんで合ってますね?」

私「はい」

検察「では、本件の概要を振り返ります。そこに同じ内容を印刷したのがあるから、それを同時に追いながら聞いてね。質問には素直に答えてね、緊張しなくていいから」

私「はい」

検察「まず被告、君のことね、は徹夜明けで9時頃に外出し、事件が起きたのは13時頃である。場所は〇〇市〇区〇〇〇 (建物名)〇階の(某大手古本屋)。ここまでは合ってるかな」

私「はい」

検察「じゃあ続けるよ、被告は(某大手古本屋)点内にてDVD1枚販売価格440円を窃盗した。エスカレーター付近で警備員に取り押さえられ、事務所へ行った後通報を受けた〇〇警察署の警官が被告を取り押さえた。その後最寄りの警察署〇〇警察署まで移送、被告はそこで指紋採取とDNA採取の後、取り調べを受けた。取り調べ後、〇〇警察署の留置施設で昨日は過ごした、合ってるね?」

私「窃盗はしてません。それ以外は合ってます」

検察「調書にもそう書いてあるね、盗ってないんだ?でも一個下の階に行ったんだよね?」

私「無理矢理腕を掴まれた恐怖からもみ合ってたら下の階まで来てしまったんです!だから、結果的に盗んだことになってしまっただけです!」

検察「つまり盗んだんだね?」

私「結果的にはそうなんじゃないですか?」

検察「結果的には」

ここまでは私の体調(?)に問題はなかったが、このあたりから徐々におかしくなっていく。質問も。

検察「その、DVDはどういった類のものなのかな?」

私「ジャニーズのPLAYZONEというシリーズです

検察「コンサート?」

私「舞台です。大勢のグループが出て、これの前年まで私の好きな人が出てました。そのDVDには出てないので興味がありません」

検察「そんな大勢が出るイベントがあるんだね」

私「はい。私は演劇が好きなのでいつものように演劇コーナーを見ていたら最初からそれ目当てで来たと誤解されました」

検察「でもその前に映画コーナーにも行ってるね、二つ手にとって、両方戻してる。二つ目は盗難防止のプロテクターがついてたから?」

私「違います。ずっと探してる映画があって、今日もなかったので、好きな映画のジャケットを見ようと思ったんです。大体、家にあるので盗む必要は全くありません」

検察「家にあるんだ。その映画は?」

私「パルプフィクション時計じかけのオレンジです」

検察「どんな話?」

私「説明しづらいです……強いて言うなら不条理系」

本当に説明しづらい二本である。

検察「その後事務所で店員に暴力を振るって暴言を吐いたとあるけど」

私「違います!暴力は振るいました。6人がかりで押さえつけられてとても痛かったのでせめてもの抵抗として自由になってた足で蹴りました。でも暴言は絶対に違います!私は店員に「男口調の女って嫌いなんだよね」と言ったので、ずっと女口調、できれば丁寧語を貫いていましたし、暴言は吐いてません!」

検察「そっか、暴言は吐いてないんだ」

私「はい!それに、盗んでもいません!結果的にそうなっただけです!」

それ以後はあまり覚えていない。なんか急に呂律が回らなくなり、「えー」「あー」「えっとー」「うーん」が増えたことは覚えている。

でもこれで帰れる!と思った。乗ったパトカーは留置所に荷物を取りに帰るだけだと思っていた。なのに、着いたのは裁判所だった。

なんで!?という思いでいっぱいだった。

(現在冷静に分析すると、容疑を否認しているのと、「結果的に」という言葉がよくなかった、低視力に金髪だったので睨んでるように見え、単純に印象が悪かった、が挙げられる。)

ここに来るまでに一度、車の乗り換えがあったのだが、容疑者の女5名程がまとめて縄で繋がれており、単独犯(仮)でよかったな・・・と心から思った。

窓から見えた裁判所の文字からここが裁判所なのはわかったが、簡易裁判までは非常に長かった。地下にある待機室にぶち込まれるのだが、前述の女達と男1名は隣の部屋で、私は一人きりだった。誰もいないから、何もない。ベンチに寝たら怒られた。錯乱して床を転げまわったら怒られた。何もしなければ、何も起こらないし、誰もこない。時計もないから、永劫の孤独に思えた。

昼食に常温保存可の牛乳とコッペパン三種が出た。今は昼なんだな、ということがわかったが、コッペパンがめちゃくちゃ不味かった。食べないの?と見回りの警官に言われるが、不味すぎて食べれない。割と舌が肥えているので、安いごはんなどが食べられない。サイ〇リヤなんかに行くと、味は美味しくても体調を激しく崩す。とりあえずコッペパンがめちゃくちゃ不味かった。体感半日はそこで待っていると警官が来て、ようやく簡易裁判のようです。エレベーターに乗るときは壁の方向を向き、乗った後は後ろを向くように決められています。どこかの階で降りると、青いプラ製の椅子がずらっと並んだ部屋に一人放置される。これを読んで待ってろ、と学校に貼ってある校歌のアレみたいなのを読まされる。目が悪かったので近づかないと読めなかった。近づいたらこそ、ショックが大きかった。

ここは裁判所です。ここでの判決によっては、最低10日間の勾留が決まります。あなたには容疑に対して異議を唱える権利が・・・」(うろおぼえです)

 

え!?私、勾留決まったの!?嘘でしょ!?だって被害額440円だよ!?というか何で!?検察での態度の何が悪かったの!!!!????

 

・・・それまでどこかうっすらドラマのように現実を捉えていた私の脳が一気に冷めていくのがわかりました・・・。私は捕まり、勾留が決まった、と、ここでようやくはっきり認識しました。その時私は泣いていたと思います。誰もいなかったので、泣いていたと思います。

しばらくすると警官が来て、私の腰についたロープを引っ張って小さな部屋に連れて行かれました。電話ボックス4個分くらいの、本当に小さな部屋です。ここが簡易裁判を行う部屋のようです。私は考えました。どうしてここに連れてこられたんだろう。私の出した結論は「素直じゃなかったから」です。よし、素直になろう。冤罪だけど、向こうの求めているように素直に罪を認めるぞ!!と意気込み、簡易裁判が始まりました。ちなみに裁判官が私と親の名前を両方間違え、私は気が抜けてしまいました。

裁判官「これより(略)に則り、裁判を始めます。第一の質問です。飴屋瑠架(仮名)さん、あなたにかかっている容疑は窃盗罪です。それは事実ですか?

私「はい!!」

・・・部屋は静寂に包まれました。裁判官とその助手らしき人物は困惑した表情で見つめ合っています。

裁判官「え、えっと・・・罪を、認めるの・・・?」

今にして思えば容疑を否認したから裁判所に来たのに即容疑を認めるとは何たるキ〇ガイムーブ。でも私は考えて、出した最善の答えがこれだったんです。

私「はい!!だって、そうなんですよね?盗んだらしいじゃないですか!!結果として盗んだ事実が出来上がってるらしいじゃないですか!!じゃあ盗んだんですよね!?」

裁判官「あ、え、えっと・・・じゃあここにサインと指印を書いてくれるかな、小指をインクにグッとやれば付くから。大丈夫、擦れば消える特殊なインクだからね

私は言われるままにサインと指印を押した。拇印ではなく、左手小指らしい。押しづらかった。

私はまたあの孤独な待機室に放り込まれた。裁判の結果がどうなったかの不安と孤独で気が狂いそうだった。恐らく3時間くらい経って、若い警官が来た。

「勾留が決まった」と冷たい声で言った。

「何でですか!!??」思わず私は叫んだ。

「決まったことだから」と警官が言う。

ひどく絶望的な気持ちに襲われた。いや、発生した絶望に襲われた、という感じだ。世の残酷さと理不尽というのをこれ以上なく感じていた。

この冷たい警官に勾留決定を告げられてからも長い時間待たされた。この部屋が嫌すぎて、だったら本があって寝そべることのできる留置所の方がマシだと思い、またパトカーに乗った時、ひどい絶望の中、嬉しかった。

ちなみに、この待機中私選弁護人が面会に来た。親が逮捕の報を聞いて即座に雇ったらしい。私が国選弁護人と契約を結ぶ前に実はもう私選弁護人が雇われていたのだ。この面会はこの日一番の幸せだった。親に見放されてないことがわかると同時に、自分を擁護してくれる人間と喋ることができたのだから。

勾留が決まるまではしおらしい態度を取っていたが、そんなもの意味がないと気づき、夕食は完食し、大声で呼ばないと貰えない水を、何度も「水ください!!」と言えるようになった。「重力ピエロ」はとりあえず読み終わった。相変わらず面白かった。私が入れられた留置所はマイナーな警察署で、かつては外国人ばかりが留置されていたが、最近は日本人も増えてきたらしい。外国人が多かったのは海沿いだからだろうか。眼鏡が無い人が多くて老眼鏡を借りてる人だらけらしい。私は罪自体は非常に軽く、本来留置所に入るような罪でもないため、割と環境のいい、このマイナーな署に留置されたのだろうか。正直ごはんが家より美味しく、感動した。コロナの影響もあってか一人部屋。独房ではなく、雑居房的な何人か入る部屋を一人で、だった。

留置番号は27。ひとしきり壁を蹴ったり、殴ったり、腕に爪で傷を付けたりと暴れた後、仕方ないので読書に没頭しよう、と思うも不意に涙が落ちた。その日は本来サマステがあった。私は「重力ピエロ」をもう一周読んで大号泣した。

 

留置所編に続く